ミニ盆栽はいつからあるの? 盆栽の起源

ミニ盆栽はいつからあるの? 盆栽の起源

盆栽の歴史、盆栽の始まりは?

盆栽の盆は器、鉢のこと、栽は植物を植えることです。
盆栽は日本の伝統文化のようなイメージがありますが、盆栽という名称で呼ばれることになったのは、江戸時代の終わり、明治のちょっと前で比較的最近のことです。盆栽の前は盆山(ぼんさん)と呼ばれていました盆栽の原型はそれ以前よりあります。
盆栽の起源は中国です。盆栽という形態は農業、園芸の発達の後になるため、いつからが始まりかははっきりとしていません。中国での農業は黄河文明は畑作が中心、長江文明は稲作が中心で文明を発展してきました。
秦の始皇帝(紀元前259年〜紀元前210年)の焚書坑儒のときには「医薬、卜筮(ぼくぜい/占い)、種樹」の書だけは焼かなかったということから、すでに樹木栽培の書があったようです。

中国盆景の形成と起源に関する研究より転載


鉢に植物を植える園芸は後漢(25~220年)の時代に中国河北省にある墓の壁画【望都壁画墓 ぼうとへきがぼ】に紅花をつけた6本の枝が丸い花盆から見える鉢植えが描かれ、街の発達とともに街路樹・庭木の栽培・庭園が広くみられるようになりました。
現存する中国最古の農業書は北魏(386年~534年)の時代に賈思勰(かしきょう)が著した『斉民要術(せいみんようじゅつ)』に巻4に果樹、巻5に樹木の栽培法が記され栽培・株分・接木・移植などが記されています。

盆栽の元はジオラマから

今日の盆栽に近いものが確認できるのは、唐(618年〜907年)の時代からで盆景といって、お盆に石や砂、草木を敷きミニチュア模型の風景を作る、今で言えばジオラマを作ることが宮廷を中心に楽しまれ、これが樹木や草木を育てる盆栽に発展していったとされています。
お盆にミニチュアの風景を作っていた様子は高宗の六男で皇太子 章懐太子 李賢 (しょうかいたいし りけん)(654-684)墓の地下通路壁画には列を成す人物の内の一人に青い色彩の花を持つ植物と赤い花を持つ植物の二つの植物を乗せた浅い鉢を持つ従者が描かれています。
盆栽と呼ばれてはいない、名称もどのように呼ばれていたかわからない時代のものですが、鉢に植えていつでも植物の成長を楽しみ愛でるという文化が、古の中華の国にあったことを絵画が伝えています。

猪俣 佳瑞美 鉢植えの文化論:日本古代から中世まで より転載

次の時代の宋(969〜1279年)の時代には、宮廷の嗜みだけでなく庶民一般に広く草や木を鉢に植え、鑑賞して楽しまれていきました。

日本での盆栽の始まりは?

日本も盆栽という形態は農業、園芸の発達の後になります。

日本の農業、園芸の多くは中国や東南アジアから伝えられたものです。
日本にも多くの古来種の樹木、植物がありますが、600年(推古8年)〜618年(推古26年)の18年間に3回から5回派遣されたとされる遣隋使、894年(寛平6年)から200年以上にわたり行われた遣唐使で、梅、牡丹、蓮、朝顔、白菜、ピーマン、スイカなどの食料、薬用として多くの植物が生活の実用品として中国大陸から日本に伝えられました。

薬用としての記述は、712年(和銅5年)に太安万侶が編纂し、第43代天皇の元明天皇に献上された古事記(こじき、ふることふみ、ふることぶみ)には第11代天皇の垂仁天皇が家来を常世の国に「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)・非時香木実(時じくの香の木の実)」と呼ばれる不老不死の力を持った(永遠の命をもたらす)霊薬をとりにいかせた話が記載されています。
非時香菓を「是今橘也」(これ今の橘なり)とする由来から京都御所紫宸殿では「右近橘、左近桜」として橘が植えられています。

奈良時代710年(和銅3年)〜794年(延暦13年)後期に編纂された万葉集には、萩を詠った歌が141首。梅を詠った歌が118首、桜は43首あり、感情を代用したり、鑑賞したりと樹木を実用だけでなく愛でる対象となってきました。
日本後紀には、嵯峨天皇が812年(弘仁3年)に神泉苑にて「花宴の節(せち)」を催したと記され、記録に残る初めての花見と考えられています。

中国の鉢に植物を植える盆景は日本にも伝わました。平安時代(794年~1185年)末ごろに貴族が庭で鉢にいれた植物を愛好している様子が絵巻物に残されています。

西行物語絵巻 国立国会図書館デジタルコレクションより転載
西行物語絵巻 国立国会図書館デジタルコレクションより転載

日本で現存する一番古い絵画資料として、鎌倉時代(1185年頃 – 1333年)中期、西行の生涯を描いた絵巻、作者不詳の西行物語絵巻には大きな石付き盆栽らしきものが描かれています。

春日権現体験記 国立国会図書館デジタルコレクションより転載
春日権現体験記 国立国会図書館デジタルコレクションより転載

鎌倉時代後期、第95代天皇の花園天皇(在位1308〜1318年)の宮廷絵師、高階隆兼[たかしな たかかね]が描いた絵巻物の貴族の邸宅の様子が描かれた春日権現体験記第5軸に木枠の大きな台に砂を敷き石付きの盆栽が置かれ、さらに奥にも2つの盆栽が描かれいます。

wikipediaより転載

伝統芸能の能の演目で観阿弥・世阿弥(1333年〜1384年/1363年〜1443年)作と言われている鉢木(はちのき)では松・梅・桜の三鉢の盆栽が話に出てくることから、広く親しまれていたことがわかります。

室町時代(1336年〜1573年)には、東山文化を築いた8代将軍の足利義政(1436年〜1490年)が、戦国時代には織田信長(1534年〜1582年)が盆栽趣味として楽しんでいたという記録もあります。

「三代将軍」 朱泥長方鉢 樹齢:約550年 樹高:81センチ 皇居の盆栽わり転載


徳川家康以降の将軍は盆栽を愛好し、家光の五葉松は現在でも樹齢約550年の盆栽が皇居に残っています。

春宵 梅ノ宴 三代 歌川豊国  1847〜52年(弘化4〜嘉永5年)

太平の続いた江戸時代には盆栽のブームが起こりました。それまでは、公家や将軍、大名と上流階級の人々の嗜みだったものが、身分を問わず、庶民の間にも園芸の楽しみとして広く広まり、多くの庶民が盆栽を趣味しました。

盆栽がBONSAIに

近年ではご年配の趣味として定着していましたが、1990年代以降は盆栽はBONSAIとして海外に広まり全世界での共通語となりました。イギリスでは盆栽キットが大ヒットし、フランスでは盆栽雑誌が発行され、イタリアでは盆栽学校まであります。それに伴い、日本でも盆栽が見直され、年代に差はなく広い世代に愛好され、若い女性に人気が出ているようです。

盆栽からミニ盆栽に

住宅事情によりお庭がないマンションや一人暮らしのアパートでも盆栽を楽しめるようにと、小さいサイズで育てるミニ盆栽が派生で生まれました。
ネットやテレビで手軽に楽しめるミニ盆栽を頻繁に紹介していることから、ご年配だけでなく若い世代にも小さい緑を楽しむことが一般的になってきました。

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