樹木の用土について
植物は太陽の光と水で命を繋ぎ止めます。盆栽も同じです。
樹木は見えている幹や枝の地上部とバランスをとって地上部と同じ分だけ、地中に見えていない地下部の根も発育させます。水は用土の中に張り巡らせた根から吸収します。そして用土に根を張り土台となった骨格で地上部に幹と枝と葉をだし、太陽の光を吸収し養分を作り出します。
動物なら住み心地の良い場所を探して移動できますが、動けない植物は土がよくないと上手に発育できなかったり、場合によっては枯れてしまいます。木は根を土の中で四方八方に張り巡らせ、地上部の盆栽を支え養分を作り出すためには欠かせない重要な役割を持ちます。木は根からしか水分を吸収できません。土の中で根を伸ばし、しっかり吸い上げることができなければ水不足になり衰弱し枯れてしまいます。
樹木の全体をしっかりとした土台で支える根と成長にとって欠かせない水分を吸収する根を作り出す基本は用土になりますので、元気なミニ盆栽にするためには光合成がしっかりできるために、細かい根が発育できる通気性と保水性のある柔らかい土という条件がなくてはいけません。
ミニ盆栽の用土について
ミニ盆栽は普通の鉢植えよりも、鉢が小さく限られた容量で土の量が少ないため、土の重要性が高く、木の種類に応じた用土が求められます。
土の性質で大切な基本項目は、通気性、排水性、保水性、保肥性です。
通気性(空気を通りやすくする性質)
排水性(不要な水を排出しやすくする性質)
保水性(水分を保つ性質)
保肥性(栄養を保つ性質)
空気の通りがよく、水はけがよく、そして保水力も備えている用土が基本となります。
矛盾した条件のそれぞれ相反することですが、バランスよく用土の種類を配合して盆栽の生長を促進させる用土にすることが重要です。
新しい土は団粒構造になっていて、大小さまざまの隙間があり,通気・通水性,保水性にすぐれ,根の生育も良好になります。団粒構造は水や肥料をよく保ち粒と粒の間も大きいので水と空気をよく通します。古くなってくると土壌粒子がばらばらになり単粒構造になり、水はけ、水持ちが悪くなり、根の伸びる隙間がなくなることになります。通気が悪いと根が呼吸できなくなります。
生長によい土質を保つために植え替えは必ず新しい土を使ってください。庭の土を使用することは通気と水はけが悪くなるたけけではなく雑菌もあります。殺菌処理された市販の用土の使用がミニ盆栽にとって好ましい用土になります。
用土の種類
赤玉土(あかだまつち)
盆栽の基本の主体となる用土です。通気性と排水性が高く、保水性もあります。
赤玉土とは関東周辺の土(関東ローム層)の赤土のことです。主に、火山灰が降り積もってできた土を乾燥させた土です。ほぼ無菌で弱酸性、色は名称のとおり赤褐色で、肥料成分は含まれていません。肥料成分がないため虫や菌が寄り付きにくい清潔な土で弊害がないことから使い勝手がよく、盆栽のみならず、園芸やガーデニングの主流の土としても使用されています。
樹木は、根っこから養分や水や空気を吸って生長するため、土の粒同士の間には隙間が必要です。赤玉土は、団粒構造の粒状の土なので、粒の中や粒同士の隙間に養分や水や空気が入り、根から吸収しやすい構造になり、樹木にとって理想の環境になります。
小学校の時のリトマス試験紙を思い出してください。用土には酸性とアルカリ性があり、pH(ペーハー)6.5~7を中性として数値が低いと酸性、高いとアルカリ性の土となります。日本の土壌は基本的に弱酸性で、日本で育つ草木の多くは、弱酸性の土を好みます。赤玉土は、pH5~6の弱酸性の土となります。
良質な赤玉土を購入するコツは、袋の下に溜まった崩れて微塵になった土の粉を確認してください。この粉は赤玉土が崩れたものなのです必ず溜まります。どのくらい粉が溜まっているか量を確認して、できるだけ粒状が潰れて崩れていない、粉が少ない赤玉土を選んでください。
大きさの種類は規格がないためメーカーによって違いますが、大粒、中粒、小粒、細粒があります。小さい盆栽の場合は小粒、細粒を選んでください。そこからさらに、ふるいにかけてにかけて崩れた微塵の土を取り除き硬質の土を盆栽の基本用土として使用します。
赤玉土は、時間の経過により粒が崩れて粘土状になっていきます。水はけが悪くなり根が窒息して生長が悪くなり、根が腐る原因にもなります。一定期間で植え替えて、新しい土の入れ替えが必要になります。
赤玉土はリン酸を吸着し、樹木がリン酸を利用しにくい環境を作ります。リン酸は花や実を沢山つけるのに欠かせない養分です。花もの盆栽、実もの盆栽を育てる場合は、リン酸を補える肥料を追加してください。
最近では値段は高くなりますが赤玉土を乾燥させて潰れにくくした「硬質赤玉土」があります。毎年植え替えをしない場合には、硬質赤玉土がおすすめです。硬質赤玉土は高温の600度から900度で焼いて固めた用土です。赤玉土は指で潰せるほど粒が崩れやすい特徴がありますが、硬質赤玉土高温で固めたため赤玉土に比べ崩れることが少ないことが特長です。土の粒が崩れが気になる方は硬質赤玉土を使う方法もあります。ただ、保水性が赤玉土に比べ悪くなりますので、保水性に優れた用土をブレンドして補ってください。
鹿沼土(かぬまつち)
栃木県鹿沼市付近に分布する黄色で粒状の軽石。赤城火山の噴出物で,地表2~3メートル下に厚さ1.5メートルほどの地層にあります。米粒大の大きさで水分を含むと明るい黄色になり、乾燥すると白くなるので土の乾燥が判断しやすく、通気性・保水性が高く、酸性土のため、主にサツキなどのツツジ科や東洋ランなどの用土に用いられます。多孔質で雑菌をほとんど含まないため、挿し芽などにも適しています。リン酸分を吸着して離しにくい性質があります。非常に柔らかくて崩れやすいので、一度ふるいにかけて大きさを揃えた用土を使用しましょう。
砂
盆栽をはじめとする園芸では海の砂ではなく、川砂や山砂を使用します。砂は通気性と排水性を高めたいときに使用します。排水・通気性に優れることから、松柏類などは赤玉土と混ぜて使用し排水効果をよくします。質のいい産地の砂は富士砂、寒水砂、桐生砂、矢作砂、鹿島砂、朝明砂、天神川砂、白川砂などがあります。白い化粧砂は鉢の中で水や雪などを表現するために使われます。細粒など粒径の小さいものはサボテンや多肉植物に使用され、種まきや挿し木用の挿床としても最適です。
竹炭(たけすみ)
余分な水を吸収するため、根腐れ防止に役立ちます。竹炭には無数の孔が開いていて、この多孔質は水や空気を通しやすいので土の中に混ぜ込むと酸素を十分に含み通気性、水はけ、水持ちの向上になります。
竹炭の孔の表面に、糸状菌、放線菌、バクテリアなどの有用な微生物が着生し、土の中の有機物を分解しながら栄養分として増殖します。微生物にも最適な生息場所となり、土壌が改良されていくため、野菜栽培の園芸では土壌改良土としても使われます。
燻炭(くんたん)
主にお米の籾殻(もみがら)や木屑を蒸し焼きにして炭化させたものです。燃えた後の多量の細かい孔(空気孔)があり、通気性がよく、肥料継続の改善、土壌中の有害物質を吸着し殺菌効果も見込めるため、野菜栽培の園芸では土壌改良材として用いられます。灰分の影響でpHが8~9のアルカリ性なので酸性になった土壌の中和に役立ちます。排水性がよいため、基本用土に少量配合することで根腐れ防止に役立ちます。
ケト土
川や池に堆積した植物が粘土質の泥上になった土です。湿り気があり肥料成分に富んでいて非常に水もちがいいのが特徴です。石付き盆栽の仕立てやコケ玉に使われます。