大自然で育つ樹木がお手本の形
ミニ盆栽という小さい樹木でも、美しいとかアートな雰囲気があると感じたことはないでしょうか?
同じ樹木で同じ年月がたったミニ盆栽でも、ただ緑があるミニ盆栽と感じるか?心が踊るような景色を作れる樹の姿を見せてくれると感じるミニ盆栽か?の違いはどこから来るのでしょう。
美しいと感じさせるミニ盆栽の樹形にはある法則がいくつかあります。多くの美しいミニ盆栽は基本樹形に則っています。
そのミニ盆栽の基本樹形は、どれも自然の中にある樹木の姿を模写した形になっています。厳しい環境下の中、自然界の気候の荒波に耐え、長年の強風や環境変化に対応した力強い樹木の姿を表した形状を「型」に当てはめたものが基本樹形になっています。
盆栽の形は非対称が美しい
盆栽の樹形の基本は、左右非対称のアンシンメトリーです。
自然界で伸びる枝は回りの樹木と日光の光を競争して我れ先に葉を伸ばし浴びようとし、空いているところ、隣の樹木より太陽に近いところと不規則に伸びます。強い風に枝が折れないように風邪を分散できるように湾曲します。この自然界での不自然な非対称こそ樹木の美しい形状なのです。
樹木を生き生きと伸ばしていけば、必ず非対称になります。
まずは形状を気にしないでのびのび育てましょう
盆栽は、自然のものですので多くの樹木の形があります。1つとして同じものはありません。自由に力強く伸びる枝はどのような樹木でも美しいものです。
育てていく中で、枝葉を細く出させると、大木感が出るので、目指す形は全体の形が三角形になります。西洋庭園にある左右対称のシンメトリーではなく、左右非対称のアンシンメトリーで、三角形は不等辺三角形になります。
この不等辺三角形を全体でも部分的に複数で作ったいくと美しい形状になっていきます。
もし、育てていく上で、目的の形が見つからなかったり、バランスが悪くなり、どの形状にしていくか迷ってしまった場合は、長い歴史の中で培われてきた基本の樹形がありますので、その基本の形状を真似してみるものいいかもしれません。
形に迷ったら真似してみましょう
下記に基本パターンをご紹介しますが、絶対に基本の形状ではないと盆栽ではないということはありません。形に縛られるのでなく、自由で自分なりに応用することでお気に入りの見応えのある盆栽作りに役立てることができます。是非、基本の樹形を参考にしてみてください。
直幹(ちょっかん)
根元の立ち上がりから幹が曲がらず、天に向かって真っ直ぐ伸びていて枝順は左右交互にバランスよく配置され、コケ順が整然としている樹形です。日当りの良い条件でのひのびと大きく育った樹形を表現しています。
上にいくほど幹と枝は細くなり、枝と枝の間隔も狭くなります。
樹形の輪郭を二等辺三角形に整えると自然の針葉樹のような樹形になります。
根がしっかりとしているとさらに美しく見えます。根が八方に広がる八方根張りでしっかりと丈夫に育って、どっしりとした美しい姿が理想です。
模様木(もようぎ)
幹が立ち上がりから左右に曲がりながら模様を作って伸びていく姿の樹形。幹がくねくねと曲線を描くことを模様と言います。直幹に比べ柔らかい印象があります。
直幹性の植物を除くと、自然環境の中で育っている木のおおよそは曲がり具合に違いはでますが、この樹形になります。
曲がっている幹の外側のから枝を出すと自然に見え、正面から見て前後の曲は前屈みに正面へ前傾すると力強く迫ってくる感じがでて迫力がでます。
針金かけや剪定によって作りますが、極端な曲がりはわざとらしさが出てしまうので、枝や幹肌を傷つけないようにゴムなどを当てて、自然で柔らかい線を作り出していきましょう。
斜幹(しゃかん)
いずれかの方向に幹全体が傾いている樹形で、不安定な傾斜地でも育つ姿、一方からの強い風が吹いたり、一方からしか光が入ってこないため光を求めて、幹や枝が斜めに傾いて力強く伸びようとする生命力を表現した樹形です。
傾きや風により一方に寄っていき、今にも倒れそうな姿を出しながら、安定感のある力強い根張りや枝でバランスを取り不安定さが出ないようするのがポイントです。枝の配置は、風下側に、長い枝を配置できるとバランスがよくなります。
鉢に植える位置も不安定さを感じさせないため、傾いている側がスペースを広くを取ると見栄えがよくなります。
懸崖(けんがい)
懸崖とは切り立ったような崖のことをいいます。四字熟語でも懸崖撒手(けんがいさっしゅ)[勇気を出して思い切って物事を行うこと]があります。
盆栽の樹形の懸崖は、厳しい環境下の岩山の急斜面や断崖から乗り出すように枝を垂らしている樹木を表現した樹形です。根元の立ち上がりより幹が低い位置にあるものを懸崖、低い位置にあるものを半懸崖といいます。
懸崖の枝はただ下がっているだけではなく、枝の先まで生命力がみなぎっていなければいけません。
特に懸崖は幹が鉢縁よりさがっているので、飾る際には台が必要になります。
文人木(ぶんじんぎ)
幹に趣のある曲がつき、枝は少なく、細い幹を強調する素朴で繊細な樹形です。無駄を省きながらも自然の姿を表現し、風景としての豊かさを盛り込み、力強さというよりも穏やかな情緒な風景を大切にします。
中国の南画に見られる様な樹形が発端といわれています。明治時代の文人達に好まれたのでこの様に呼びます。赤松や五葉松で仕立てることの多い樹形です。
吹き流し(ふきながし)
一方方向から絶えず強風に晒されて幹や枝が全て一方向に曲がって伸び、流れ出ている状態の木を模した樹形です。
絶えず風に吹かれながらも、そんな厳しい環境条件の自然の中でも上に上に伸びようとする力強さを表現しています。みる人に風を感じさせることが理想です。
自然に生える木も、木のバランスをとるために枝が向かうのとは反対方向に根が伸びだしています。盆栽でも根を同様にすると樹形が美しく見えます。
また、樹高より樹形を大きくするとが樹形が大胆に見え風に流れている様子がわかりやすくなります。
多幹(たかん)
根元から幹の立ち上がりが複数の樹形をいいます。幹が2本のものは「双幹」、幹が3本のものは「三幹」、5本以上のものを「株立ち」と呼ばます。
幹は奇数がよいとされます。2本以外の偶数はよくないとされています。2本の大小の差が小さければ「夫婦双幹」、大小の差が大きければ「子持ち双幹」と呼ばれます。
寄せ植え
3本5本7本と奇数の株を1つの鉢に植えて、森や林の風景にみたてた景色を作る樹形です。1番太くて大きい木を主として左右に左右に広がっていくように木を配置していきます。背の低い木は奥や左右の端に配置すると遠近法で奥行きが生まれ集合美が出ます。
1本の樹木だと鑑賞に寂しい時は寄せ植えをするとボリュームがでて迫力が出ます。
石付き
天然の石のくぼみに気を植えて、山や海岸の厳しい環境下の岩場に逞しく生きる姿を表現した樹形です。
部分的に取り入れるだけでもサマになります
好きな樹形、気に入った風景に挑戦して、趣のあるミニ盆栽に仕立ててみましょう。ミニ盆栽の基本樹形の原型は厳しい自然に生きる木の姿をミニチュア化し、自然風景に見えるように見栄えを良くしたものです。
銘木と呼ばれる盆栽にこれらの樹形が当てはまらないものが多くあるように、形式にこだわることはありませんが、部分的に取り入れたり。ポイントとして真似してみるとミニ盆栽の樹形がうまくまとまることがあります。成長途中のミニ盆栽は、樹形が未完成です。数年後のミニ盆栽のために、どんどん真似してみることをお勧めします。